勉強まとめ:政治-対立軸/政治的コンパス
政治を執り行う範囲は非常に広く様々な対立軸があるみたいです。メディア等で日々、右派/左派、保守/リベラルのような言葉をよく目にします。そこで今回は、”対立”する考え方や主義思想をまとめます。
参考文献[1]
久米郁夫、川手良枝、古城佳子、田中愛治、真渕勝著、”政治学(New Liberal Arts Selection)”、有斐閣、2003年12月20日初版
以下、今回の目次
自分が普段研究を行っている分野は工学(生体計測)です。工学の分野では「問題」を解決する「手法」の評価は、「定量的」に行いやすいです(ほぼ確実に行えます)。なぜなら、同じ条件の下で手法を比較し最終的に数値結果を得ることができるからです(e.g. 画像の画素値)。一方、政治の世界では「問題」を解決する「政策」の評価は、「定量的」に行えないことが多いです。そもそも、これから未来に行う新たな政策の結果を得ることはできません。また社会というシステムは工学部で扱う問題のシステムに比べてはるかに複雑であるため、他国で行われた政策を日本で適用したからといって数値的に結果がよくなるとは限りません。ここに政治の難しさを感じました。しかし、だからといって投げ出すわけにはいきません。
そこで、複雑な問題を各争点ごとに軸を作ってその上で議論をおこなうようにします。このようにすることで幾らかは議論がしやすくなるので、主権者(国民)にとって大きな利点があります。また、メディア等によって主権者の代理人(政党)がどのようなことを行っているか監視しやすくなるといった利点もあります。
自分がこの軸を用いて議論を行う枠組みに対して以下のような数学との共通性を見つけ納得しました。それは、数学において「y=x+2」のx軸上の解が「x=-2」であり解答用紙に「x=-2」と書くように、政治においても「ある争点」の自分が正しいと思う解の対立軸の位置に「Aという政党が位置する」場合、投票用紙に”A”と書くということです。
主権者の観点からすると上記のような考え方が主なものだと思います。政党から見た場合はまた別の側面が見えてきますがこれは今回まとめません(票集めの方法)。
全ての対立軸/争点について詳細にまとめるには時間がなかったので有名どころを簡単にまとめていきます。説明の際には[1]p.28の図1-6を参考に、①政治的統制②経済的統制③文化/社会的統制の強弱を考えたいと思います。
- 社会主義⇔資本主義
・利益の生み出し方の考え方の違い
・社会主義:経済的統制が強い(計画経済)
利点:
貧富の格差の是正 不況の抑圧
欠点:
労働意欲の低下 生産性の低下による経済の停滞
・資本主義:経済的統制が弱い(自由競争)
利点:
自由な市場における需要と供給の一致 競争社会による経済の成長
欠点:
貧富の格差の拡大 不況サイクルの存在
・冷戦では世界を二分した大きな対立軸
〇ある程度実証が進み、資本主義によった経済が世界で行われる - 全体主義⇔無政府主義
・究極的な考え(非現実的)
・全体主義:全ての統制が極限まで高い
・ナチズム
・無政府主義:全ての統制がない
・アナキズム パンク - 保守⇔革新
・政治のかじ取りで未来を考えた時の違い
・その時々で内容は変わる(改憲が保守であったり、革新側であったり)
・統制の強弱は過去の強弱を維持するのが保守、変更するのが革新
・保守:現在の社会を良しとし現状維持を望む
過去の社会を良しとし昔へ戻そうという考え方でもある
・革新:リスクを抱えながらも新しい政策で社会をよくしようとする考え方 - 大きな政府⇔小さな政府
・政府が行う仕事量に関する考え方
・経済や福祉に関する考え方
・大きな政府:社会主義的 加えて福祉に力を入れる
例)北欧国家の医療制度と高税率
・小さな政府:資本主義的 自由/自己責任を掲げる
例)オバマケア以前のアメリカの医療制度
例)各種国営組織の民営化 - ナショナリズム⇔グローバリズム
・国際社会において自国に重きを置くか置かないか
・ナショナリズム:自国に重きを置く・文化/社会的統制が強い
例)アメリカンファースト
・グローバリズム:国境による区別をしない・文化/社会的統制が弱い
例)ドイツの移民受け入れ
・戦争などの争いに繋がる非常にデリケートな軸
旧ユーゴスラヴィアやルワンダなどのジェノサイドが発生することも
〇現在も様々な民族が虐殺にあう可能性がある(ロヒンギャ族の問題) - 保守派⇔リベラル(最近のアメリカ)
・保守
・過去のアメリカを取り戻す方向性
・トランプ大統領
・ナショナリズム:関税率の増加・移民政策
・キリスト教などの宗教でも保守的(e.g. 同性婚を認めない)
・上記のように書き出すと悪く見えるがそれぞれ救われる人がいて
支持が広がった(以下の記事参照) ・リベラル
・自由を求める
・政治/文化/社会的統制が弱め 経済的統制は強め
・グローバリズム
・多様性の容認 - 左派右派
・ある軸(争点)を持ってきたときにどこに位置するかを示す言葉
・その時々、争点によって変わる
・日本では
・右:戦後に大日本帝国へ戻る(改憲する)方向性を持った保守派のこと
・愛国的な考え方を持つものを指す
・左:戦後の新たな憲法を守る(改憲しない)方向性を持っていた革新派のこと
・売国的な思考を指すことがある...(連合国よりということで)
・上記を踏まえ、ネット上では現政権を支持するのが右派、批判するのが左派のようになっている
- 主権者(民衆-本人)側からみた場合
利点:
①各争点ごとに自分の考え方を把握し、投票を行うべき政党が明確になる
②主権者の代理人(政党)の行いを監視しやすくなる(メディアを通して)
欠点:
①メディアに踊らされてしまう可能性がある(メディア自体も軸上のどこかに位置している)
②軸の中心に位置する方が票が集まるため(正規分布的な考え)、中途半端な政策を掲げる政党が増えてしまう - 政党(政治家-代理人)側からみた場合
利点:
票集めのために、各争点でどこに位置する政策を掲げればよいかが分かる
欠点:
調べていないのでわからない(ないと思う) - 対立軸からわかる間接民主制の問題点
投票する意味がなくなってしまうことが理論上存在することが対立軸からわかる。これは間接民主制の問題点。以下に例を示す。
A、B、Cという政策の争点があり、X、Y、Zという政党があったとしよう。この時それぞれの軸で自分が選んだ位置に最も近い政党に投票を行う。各争点の軸上で自分の考えに一番近い政党は以下のようになった。
A:X>Y>Z
B:Y>Z>X
C:Z>X>Y
このようになってしまうと、自分がどこに投票してもABC全てを満足する政党が選べなくなってしまう。これがコンドルセが発見した投票のパラドックスという問題である。
少し前までは、世界的に見ても主に大きな争点が1,2個で平面上で議論を行うことができた。フランス革命とナポレオン戦争あたりでは、革新派は自由を掲げ、保守派は現行の体制を守ろうとした。日本でいえば、戦後の防衛や外交に関して保守(安保からの脱却/大日本帝国への回帰)、革新(安保の維持)の軸が主流となっていた。しかし現在では外交(周辺事態/貿易/安保)だけでなく、労働環境、環境問題、原発問題、移民問題、経済政策、地方/都市問題など多様で重要な争点が生まれており、n(>3)次元的な政治的コンパスが必要となっている。
参考文献[1]は2003年に出版されたもので当時もすでに複雑な社会であった。[1]では今後、複雑な問題がそれぞれパッケージングされてまとまり大きな1つの軸に収束する未来と、より複雑化する社会のどちらになるかを明確に推測することはしていなかった。結果として2018年現在を見てみると、より複雑な社会になり考えることは多く、政治における争点は多岐にわたっている。そしてこれからも、この安定した(世界的な大戦がない)社会では、政治における争点は多岐にわたっていくと考えられる。
あとがき
工学の分野での問題解決方法の探索と違って、政治では事前情報のみで複雑な問題解決の方法を検討していく点が非常に難しいなと思いました。また、投票のパラドックスは民主制の一つの明確な問題であることも今回の勉強を通して理解することができました。
後は、争点がいっぱいあるし政治用のSNSできないかなぁと思いました。政治(政党/政策)もぐるなびとかFilmarksみたいなレビューを行い共有することで若者も巻き込めるのではないかと思います。一方でFaceBookは政治関連の記事を全消去していることを考えると、SNSとの相性(公平性)が悪い一面もあるとは思います。